メディアリテラシー教育、米で法整備進む 超党派で推進

歴史や数学を学ぶのと同じように、インターネットの嘘と事実を見分ける方法も学校で教えようという機運が高まるアメリカ。「フェイクニュース」問題の深刻さを受け、メディアリテラシー教育を法律でも後押しする動きが出ています。

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5州で導入、11州が検討中

フェイクニュース」によって、党派間の対立や政治的分断が進んでいると指摘される中、法整備の動きは超党派で進められています。州によっては教員だけでなく、リテラシー教育に重要な役割を果たす図書館司書、保護者もこうした動きをサポートしています。

メディアリテラシー教育を推進し、モデル法案も提案している団体「Media Literacy now」によると、2017年には計5つの州で関連法案が成立。このほかにも11州が法案を提出もしくは検討中で、2018年も導入は加速しそうです。

各州の動き

ワシントン州では昨年4月、メディアリテラシーやインターネットの安全な使用を推進する法律が成立しました。法律では、メディアリテラシー教育が学校のカリキュラムにどう組み込まれているかを見直すため、図書館司書や教員が現在どんな授業を行っているかを調査するよう、学校に求めています。また、メディアリテラシーを学ぶのに適した教材や取り組みを集め、リンク集を紹介するウェブサイトの設置も義務付けました。

コネティカット州でも昨年6月に、教員、図書館司書、PTAや専門家などでつくるメディアリテラシー評議会を設置する法案が成立。評議会は、州の教育委員会に、推奨する取り組みや教え方についてアドバイスを行います。

ロードアイランド州法律は、メディアリテラシーを基本教育プログラムに組み込むことを検討するよう、学校に求めています。州または国の、メディアリテラシー教育に取り組む団体と連携して行います。

ニューメキシコ州も、地元の学校が適したプログラムを開発し、レッスンを提供することを求める法律があります。州知事は将来的に「教科に関わらず、カリキュラム全体に(リテラシー教育を)組み込みたい」としています

このほか、ニューヨーク州アリゾナ州ハワイ州などでも、検討が進んでいます。

 

Media Literacy now の、メディアリテラシー教育推進ビデオ


中高大学生のフェイクニュースを見分ける能力に関する調査を行った、米スタンフォード大チームのSam Wineburg教授は、規制やテクノロジーではなく、教育で問題を解決するべきだと述べています

一方で、法整備の動きに関しては次のようにも指摘しています。

すでにいっぱいのカリキュラムに、(メディアリテラシーという)新たな選択科目を詰め込むのは、基礎が揺らいでいる家に新しいペンキを塗るようなものだ。いいアピールにはなるかもしれないが、根本的な問題解決にはならない...教育そのものを立て直す必要がある。

スタンフォード大の調査に関する以前のブログ記事:デジタルネイティブは、フェイクニュースを見抜けるか?

AP通信記事によれば、こうした取り組みを推進する財源の不足や、教員への負担増の懸念もあり、法律は現在のところ自主的な取り組みを促す内容に留まっています。