デジタルネイティブは、フェイクニュースを見抜けるか?

デジタルネイティブ」世代は、ネット上の嘘と事実を区別することができるのか?

海外のいくつかの研究によると、SNSに早くから親しんでいる若者でも「フェイクニュース」を見分ける能力は高くないという結果が報告されています。

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 4人に1人が「ネットの情報すべて正しい」

英情報通信庁(Ofcom)の2017年の調査によると、自分専用のスマートフォンを持っている生徒の割合は8-11歳で39%、12-15歳では83%に上ります。宿題などでインターネットを利用している生徒のほぼ4人に1人(8-11歳の25%、12-15歳の23%)が、ウェブサイトやアプリ上で目にする情報は「すべて真実だと思う」と回答しました。

英サルフォード大と国営放送BBCの1年に及ぶ調査でも、9-14歳の生徒の大半が「フェイクニュースとは何かを知っている」と答えたものの、偽情報を必ずしも区別することはできなかったという結果が報告されています。

また、アメリカで計約7,800人の中高生・大学生を対象に行われたスタンフォード大の研究(2016年)は、若者が広告や偽コンテンツと正しい情報を区別する能力の低さを、次のように指摘しています。

"若い世代がインターネット上の情報について理論的に考える力は、「乏しい(bleak)」の一言に尽きる。デジタルネイティブたちはFacebookTwitterを使いこなしながら、Instagramに自撮り写真を投稿し、友達にメッセージを送る。だがソーシャルメディア上に漂う情報を見分けるとなると、簡単にだまされてしまう。"

 

研究では、福島第一原発事故の影響で植物に異常が見られたことを示唆するようなキャプション付きの写真(実際にネット上に投稿されたもの)を見せました。40%近い生徒が「原発周辺の状況を示す強い証拠だ」と答えた一方、情報の出所について何も記述がないことを指摘した生徒は20%未満でした。

 

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EVALUATING INFORMATION : THE CORNERSTONE OF CIVIC ONLINE REASONING

生徒の4分の1は「強い証拠とは言えない」と答えましたが、理由として挙げられたのは「放射能の影響を受けたと思われるほかの動物や植物が写っていないから」というものでした。

論文は、生徒たちが「写真に注意を奪われ、写真のみに頼って投稿の信頼性を評価」しており、情報源など基本的な情報の確認ができていなかったと述べています。

8割がネイティブ広告を「本物のニュース」

スタンフォード大は、生徒たちが広告とニュース記事を区別できるかどうかも調査しました。従来型広告、ニュース記事、ネイティブ広告の3種類が掲載されたウェブサイトを見せたところ、対象となった生徒の80%以上が「スポンサー記事」と明記されたコンテンツでも「本物のニュース(real news)」だと回答。

論文は「生徒たちが『スポンサー記事』の意味を理解していないことを示している。これは小学生のうちから明確に教えなくてはならないことだ」と警告しています。

 

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EVALUATING INFORMATION: THE CORNERSTONE OF CIVIC ONLINE REASONING

 こうした状況の中、海外の教育現場ではデジタルネイティブ世代に向けたメディアリテラシー教育も始まっています。次回のブログでは、「フェイクニュース」を見分ける方法を教える欧米の試みを紹介します。